(Q)単身生活をしている60歳男性Aさんは、大学卒業後に就労経験がなく、これまで父親からの仕送りで生活してきました。3カ月前に父親が亡くなり、Aさんは300万円を相続しましたが、金銭管理能力が低く、すべて無計画に使い切ってしまいました。現在は資産もなく、就労経験もないため就職先も見つかりそうにありません。このようなAさんが生活保護を申請した場合、過去の浪費や稼働能力の不活用を理由に申請が却下されるのでしょうか?
(A)このケースでは、「以前300万円を浪費したこと」だけを理由に、現在の生活保護申請を当然に却下することはできません。 一方、Aさんに現在どの程度の稼働能力があり、それを活用する意思があるかは別に確認されます。
生活保護法4条は、現在利用できる資産・能力などを最低生活の維持のために活用することを保護の要件としています。Aさんは相続した300万円をすでに使い切り、申請時点で現金・預貯金などの資産がないのであれば、福祉事務所はまず現在の資産・収入・生活状況を調査して保護の要否を判断します。
今回の質問を簡単に言い換えると、
「以前まとまったお金を持っていたのに浪費してしまい、長年働いてこなかった人でも、現在本当に生活できない状態なら生活保護を受けられるのか?」
という問題です。
300万円を浪費したことについて
福祉事務所は当然、**「300万円をいつ、何に使ったのか」「現在本当に残っていないのか」**を確認するでしょう。
しかし、すでに消費され、現在利用できる資産が存在しないのであれば、過去に浪費したという事実そのものを一種のペナルティとして、現在の最低生活保障を一律に拒否する仕組みではありません。 生活保護法2条も、法律上の要件を満たす限り保護を受けられる「無差別平等」の原則を定めています。
「60歳で一度も働いたことがない」点は別に判断します
ここで重要なのが稼働能力の活用です。
厚生労働省は、単に「働ける年齢なのに無職」というだけで判断するのではなく、①実際に稼働能力があるか、②その能力を活用する意思があるか、③実際に就労できる場を得られるか、という3点で判断するよう定めています。年齢だけでなく、健康状態、資格、生活歴、職歴なども総合的に評価します。
したがって、Aさんが60歳で、大学卒業後一度も就労経験がないとしても、「これまで働いてこなかった」という過去だけで申請を却下するわけではありません。
例えば、現在Aさんに一定の就労能力があり、ハローワークへの求職登録、求人への応募、就労支援への参加など、本人の能力に応じて真摯に仕事を探しているものの、年齢や職歴等の事情から就職先が見つからない場合があります。この場合、現実に就職できていないことだけを理由に「稼働能力を活用していない」とするのは適切ではありません。 厚労省も、求職活動をしていても現実に働く職場がない場合には保護を受け得ると説明しています。
逆に、Aさんに現実的な就労能力があり、適切な就労機会もあるのに、正当な理由なく「働きたくない」と求職活動そのものを拒否する場合には、稼働能力を活用していないとして問題になる可能性があります。
したがって、このケースは、
過去に300万円を浪費した → それだけで却下ではない
過去60年間ほぼ働いていない → それだけで却下ではない
現在資産がなく最低生活を維持できない → 保護の必要性を判断
現在働ける能力がある → その能力・就労意思・実際の就労可能性を個別に判断
という順番で考えると分かりやすいです。
結論として、Aさんの過去の浪費や就労経験のなさを「罰」として生活保護を拒否するのではなく、申請時点の資産・収入と、現在の稼働能力およびその活用状況を具体的に調査して保護の要否を決定することになります。Aさんが現在無資産・無収入で、能力に応じた求職活動にも取り組むのであれば、就職先がまだ見つかっていないことだけで申請を却下するものではありません。
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