(Q)法第19条第3項や第30条第1項ただし書の規定は、どのような場面で適用されますか?例:法第19条第3項や第30条第1項ただし書は、施設入所者やその世帯の保護にどのように関係しますか?
(A)生活保護法第19条第3項と第30条第1項ただし書は、主に生活保護を受けている人を、居宅ではなく施設などで保護する場合に適用されます。
両者の役割は異なります。
- 第30条第1項ただし書
→ 施設入所などの方法で生活扶助を行える場面を定める規定 - 第19条第3項
→ 施設入所後、どこの福祉事務所が引き続き保護を担当するかを定める規定
1.第30条第1項ただし書とは
生活扶助は、原則として本人の居宅で行います。
しかし、次のような場合には、救護施設、更生施設、日常生活支援住居施設その他の適当な施設への入所や、私人の家庭への養護委託によって生活扶助を行うことができます。
- 自宅で生活扶助を行うことができない場合
- 自宅での保護では、保護の目的を達成しにくい場合
- 本人が施設入所などを希望した場合
つまり、第30条第1項ただし書は、**「どのような方法で保護するか」**を定めた規定です。
なお、この規定があっても、原則として本人の意思に反して施設入所を強制することはできません。生活保護法第30条第2項にも、その旨が明記されています。
2.第19条第3項とは
第30条第1項ただし書により、被保護者を救護施設などに入所させた場合でも、施設の所在地を担当する福祉事務所に、当然に保護責任が移るわけではありません。
第19条第3項では、施設への入所や養護委託が続いている間は、原則として、入所・委託前の居住地または現在地を基準として決まった福祉事務所が、引き続き保護を担当するとされています。
これは、施設の多い自治体に生活保護の実施責任が集中することを防ぎ、入所前から担当していた自治体との継続性を保つための仕組みです。
3.具体例
例1:A市で生活保護を受けていた人が、B市の救護施設に入所した場合
A市の福祉事務所が、第30条第1項ただし書に基づいて、本人をB市の救護施設へ入所させたとします。
この場合、
- 施設で保護する根拠
→ 第30条第1項ただし書 - 入所後もA市が担当を続ける根拠
→ 第19条第3項
となります。
したがって、単に施設がB市にあるという理由だけで、B市の福祉事務所へ担当が変更されるわけではありません。
例2:本人は施設、家族は元の自宅に住んでいる場合
夫婦や親子のうち、1人だけが施設に入所し、ほかの家族が元の自宅に残っている場合があります。
この場合、まず、
- 施設入所者と家族を、生活保護上同じ世帯として扱うか
- 世帯分離をして、施設入所者だけを別に保護するか
- どの福祉事務所が施設入所者を担当するか
を分けて判断します。
第19条第3項は、主として③の保護の実施責任を決める規定です。第30条第1項ただし書は、施設で保護することができるかという保護の方法を定める規定です。
これらの条文だけで、施設入所者が家族と自動的に別世帯になるわけではありません。
4.施設入所者と出身世帯の関係
施設に入所して身体的に離れて暮らしていても、生活保護上、直ちに別世帯になるとは限りません。
世帯認定では、次の事情を総合的に見ます。
- 入所が一時的か、長期間に及ぶか
- 退所後に家族のもとへ戻る予定があるか
- 家族との経済的な関係が続いているか
- 生活費や収入を共同で管理しているか
- 家族間の扶養関係
- 世帯分離を行う必要性
施設入所者が世帯分離されている場合でも、原則として出身世帯の居住地を本人の居住地として認定し、出身世帯が移転した場合は、その移転先を居住地として扱う運用があります。
一方、長期間の入所が続き、家族関係や生計関係が実質的に失われている場合には、一定の条件のもとで、出身世帯とは別の世帯とみなされることがあります。厚生労働省の問答では、おおむね5年以上の入所、生活保持義務関係がないこと、出身世帯の生計中心者が代替わりしていることなどが例示されています。
まとめ
簡単に整理すると、次のようになります。
| 規定 | 決める内容 |
|---|---|
| 第30条第1項本文 | 生活扶助は原則として居宅で行う |
| 第30条第1項ただし書 | 必要な場合は施設入所などにより保護できる |
| 第19条第3項 | 施設入所後も、入所前の居住地・現在地を基準に担当福祉事務所を決める |
| 世帯認定・世帯分離 | 家族関係、生活実態、入所期間などを別途判断する |
したがって、**第30条第1項ただし書は「施設で保護するための規定」、第19条第3項は「施設に入った後も、どこの福祉事務所が責任を持つかを決める規定」**と理解すると分かりやすいです。
⇓