(Q1)甲が結核を発病し、A市のアパートを引き払った上でC市の病院に入院しました。医療費の支払いに困窮し保護の申請をした場合、保護の実施責任はA市、B市、C市のいずれの実施機関にあるのでしょうか?(Q2)甲には乙および丙という家族がいますが、甲の入院に伴い乙および丙は甲の妹の家庭に引き取られ、中学校に通っています。この場合、甲と乙・丙は同一世帯として取り扱うべきでしょうか?それとも乙・丙は甲の妹の世帯員とみなすべきでしょうか?
(A1)この場合、原則として、C市の福祉事務所が保護の実施責任を負います。
理由
生活保護の実施責任は、次の順序で判断します。
- 生活の本拠となる「居住地」がある場合
→ その居住地を管轄する福祉事務所 - 居住地がない、または明らかでない場合
→ 本人が実際にいる「現在地」を管轄する福祉事務所
生活保護法第19条第1項は、居住地のある人は居住地の実施機関が、居住地のない人は現在地の実施機関が保護を行うと定めています。
今回、甲はA市のアパートを引き払ってからC市の病院に入院しています。そのため、保護申請時にはA市に生活の本拠となる住居が残っておらず、A市は甲の「居住地」とはいえません。
したがって、甲は居住地のない人として扱われ、入院している病院の所在地であるC市が現在地となり、C市の福祉事務所が保護を決定・実施することになります。厚生労働省の実施要領でも、「居住地」とは、単なる住民票上の住所ではなく、実際に居住している事実がある場所とされています。
各市の判断
| 市 | 実施責任 | 理由 |
|---|---|---|
| A市 | 原則なし | アパートを引き払い、居住の実態がなくなっているため |
| B市 | なし | 甲の居住地・現在地のいずれでもないため |
| C市 | あり | 居住地がない甲の現在地である病院がC市にあるため |
注意点
甲がA市のアパートを引き払わず、退院後に戻る予定で家賃を払い続け、家財道具も置いているなど、A市に生活の本拠が残っている場合は、A市が実施責任を負う可能性があります。
しかし、設問のようにアパートを完全に引き払った上で入院した場合は、C市が実施機関になると考えるのが基本です。なお、病院への入院は、生活保護法第19条第3項の「救護施設等への入所」とは異なるため、当然に入院前の自治体へ実施責任が残るわけではありません。
(A2)原則として甲と乙・丙を別世帯として取り扱い、乙・丙は甲の妹の世帯員とみなすのが適当です。
理由は、生活保護上の世帯は、親子関係や住民票だけでなく、実際に誰と生活し、誰によって養育され、生計を共にしているかによって判断されるからです。
甲と乙・丙は親子であり、入院前は同一世帯でした。しかし、今回の事情では、
- 甲は長期の入院が見込まれている
- 甲から乙・丙への仕送りがない
- 乙・丙は甲の妹の家庭で生活・養育されている
- 甲の妹の居住地から中学校へ通っている
- 甲が短期間で退院し、再び一緒に暮らす見込みがない
という状況です。
そのため、乙・丙と甲との生計関係よりも、現在一緒に暮らし、実際に養育している甲の妹との生計関係の方が強いと判断されます。生活保護問答集でも、このような場合には、乙・丙は甲の妹に引き取られてその世帯員になったものとし、甲は単身世帯として扱うのが適当とされています。
分かりやすく整理すると
| 人物 | 生活保護上の世帯 |
|---|---|
| 甲 | 入院中の単身世帯 |
| 乙・丙 | 甲の妹の世帯員 |
ただし、甲の入院が短期間で、退院後すぐに乙・丙を引き取って再び生活することが具体的に予定されている場合は、甲と乙・丙を同一世帯と判断する余地があります。最終的には、入院期間、仕送り、養育状況、退院後の生活予定などの実態を福祉事務所が確認して判断します。
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