(Q1)「処分することができないか、または著しく困難な資産」には、どのようなものが含まれますか?(Q2)このような資産を保有している者に対しては、どのような措置を講じるべきですか?
(A1)「処分することができない、または著しく困難な資産」とは
生活保護では、利用できる資産は原則として売却などにより生活費に充てます。ただし、法律上・事実上の理由により売却等ができない、または売却することが非常に難しい資産については、直ちに処分を求めない場合があります。厚生労働省の実施要領も、このような資産を処分原則の例外としています。
具体的には、次のようなものが考えられます。
1.共有者などの同意が得られず、処分できない資産
例えば、兄弟姉妹など複数人で共有している土地や建物で、他の共有者との話合いがまとまらない場合です。
ただし、共有持分だけを売却できる場合もあるため、共有であるというだけで直ちに「処分できない資産」になるわけではありません。
2.相続関係が整理されていない不動産
所有者が亡くなったまま相続登記がされておらず、相続人が多数いる、相続人の所在が不明である、相続争いがあるなどの事情によって、すぐに売却できない土地や建物です。
3.境界や所有権について争いがある不動産
隣地との境界が確定していない、第三者が所有権を主張している、訴訟中であるなど、権利関係に重大な問題がある資産です。
4.法令上の制限により、事実上売却が困難な土地
例えば、農地法上の許可が得られず買主が見つからない農地、接道義務を満たさない土地、建築や利用が大きく制限されている土地などです。
ただし、利用制限があるだけでは足りず、実際の売却可能性や市場価値を調査して判断されます。
5.買い手が全く見つからない資産
山林、原野、墓地に隣接した土地、極端に狭い土地、道路に接していない土地などで、不動産業者に依頼しても長期間買い手が見つからない場合です。
単に希望価格で売れないというだけでは該当しません。価格を下げても売却できないなど、客観的に処分が困難であることが必要です。
6.差押えや担保権などが設定され、処分が難しい資産
税金の滞納による差押え、抵当権、仮差押えなどがあり、本人だけでは自由に売却できない資産です。
もっとも、差押えや抵当権が付いていても、関係機関や債権者との調整によって売却できる場合があるため、個別の確認が必要です。
「売っても費用の方が高い資産」との違い
売却価格よりも、測量費、登記費用、解体費用、仲介手数料などの方が高くなる資産は、厳密には別の例外である、
売却代金よりも売却に要する経費が高いもの
に当たります。厚生労働省の実施要領では、「処分が不可能・著しく困難なもの」とは別に規定されています。
本人が「売りたくない」と言うだけでは該当しません
先祖代々の土地だから手放したくない、将来値上がりするかもしれない、希望価格より安い、といった本人の気持ちや希望だけでは、通常は「処分が著しく困難」とは認められません。
福祉事務所は、不動産業者の査定、売却活動の状況、権利関係、法令上の制限など、客観的な事情によって判断します。
処分が難しいかどうかの確認方法
一般的には、次のような資料によって確認されます。
- 不動産業者の査定書や売却困難との回答
- 登記事項証明書
- 共有者や相続人の状況
- 差押え・抵当権などの登記内容
- 農地転用や売買許可の可否
- 境界紛争や訴訟の資料
- 一定期間売却活動を行った記録
まとめ
「処分することができない、または著しく困難な資産」とは、例えば、相続や共有関係が複雑な不動産、権利争いのある土地、法令上の制限が強い土地、客観的に買い手が見つからない資産などです。
ただし、単に売りたくない、希望価格で売れないという事情だけでは認められません。実際に処分できる可能性や費用、権利関係を調査したうえで、福祉事務所が個別に判断します。
(A2)「処分することができない、または著しく困難な資産」を保有している場合は、その資産があるという理由だけで保護申請を却下したり、保護を廃止したりするのではなく、原則として保有を認めたうえで保護を実施します。
厚生労働省の実施要領では、処分できない、または処分が著しく困難な資産は、処分を求める原則の例外として扱われています。
講じるべき措置
1.処分困難であることを確認する
まず、本人の説明だけで判断せず、次のような事情を調査します。
- 不動産業者に依頼しても買い手がつかない
- 共有者や相続人が多数いて、権利関係が整理できない
- 境界や所有権について争いがある
- 農地法などの規制により売却が難しい
- 差押えや抵当権があり、自由に処分できない
- 売却費用が売却代金を上回る
査定書、登記事項証明書、売却活動の記録、関係者との交渉状況など、客観的な資料によって確認します。
2.処分できない間は保有を認める
調査の結果、現時点では処分できない、または処分が著しく困難であると認められた場合は、その資産を持ったまま生活保護を受けることができます。
この場合、資産の保有を理由として、直ちに保護を拒否することは適切ではありません。
3.売却以外の活用方法を検討する
売却が難しい場合でも、利用できる方法がないかを検討します。
例えば、
- 土地や建物を賃貸して収入を得る
- 農地を貸し付けて小作料を得る
- 共有者に持分の買い取りを求める
- 隣接地の所有者に購入を打診する
などです。
実施要領でも、売却が困難な場合は、貸与によって収益を得るなど、別の活用方法を考慮することとされています。
4.処分の可能性を定期的に見直す
一度、処分困難と判断されたからといって、永久にそのままになるとは限りません。
福祉事務所は、その後も必要に応じて、
- 権利関係が整理されたか
- 買い手が現れたか
- 周辺の土地価格が変化したか
- 法令上の制限が解消されたか
- 賃貸などによる活用が可能になったか
を確認します。
処分可能な状態になった場合は、改めて売却や活用を求めることになります。
5.後日売却できた場合
保護を受けている間に資産が売却でき、売却代金を受け取った場合は、その金銭を今後の生活費に充てることになります。
また、処分すれば生活費に充てられる資産であったものを、換金まで時間がかかるため保護を受けていた場合には、売却後に生活保護法第63条に基づき、受けた保護費の範囲内で返還を求められることがあります。
ただし、もともと客観的に価値がなく、処分不能な資産を持っていただけであれば、資産を保有していたこと自体を理由に返還を求められるものではありません。
具体例
相続した山林を所有しているものの、道路に接しておらず、不動産業者数社に依頼しても買い手が見つからない場合を考えます。
この場合は、
- 査定書や売却活動の記録を確認する
- 現時点で処分困難と認定する
- 山林を保有したまま保護を実施する
- 賃貸や隣接地所有者への売却などを検討する
- 状況が変わった場合は再度、処分可能性を確認する
という対応になります。
まとめ
このような資産を持つ人に対しては、直ちに売却を強制したり、保護を拒否したりするのではありません。
処分困難であることを客観的に確認したうえで、
- 当面は保有を認める
- 売却以外の活用方法を検討する
- 処分可能性を定期的に見直す
- 後日換金できた場合は、必要に応じて保護費の返還を検討する
という措置を講じるのが基本です。
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