(Q)夫が亡くなり、相続人は私(妻)と、長男・長女の3人です。私は夫名義の家に住んでいましたが、長男から「住み続けたいなら、自分の相続分に見合う賃料を払うか、払えないなら出て行ってほしい」と言われています。家が広いため、その賃料を払うのは難しい状況です。私は本当に家を出なければならないのでしょうか?また、もし夫が「家を長男に相続させる」と遺言していた場合はどうなるのでしょうか?
(A)■回答:本当に家を出る必要があるのか?
結論から言うと、妻であるあなたには「自宅に住み続けるための強力な保護制度」があり、必ずしも出て行く必要はありません。
主に次の2つの制度がポイントです。
① 配偶者居住権(民法1028条以下)
令和2年の相続法改正で導入された制度です。
●内容
夫死亡後、
妻は無償で自宅に住み続けることができる権利
(=配偶者居住権)を取得できる可能性があります。
●条件
- 原則、遺産分割協議で決める
- または遺言で配偶者居住権が与えられている
- 他の相続人(長男・長女)と合意できれば設定可能
●ポイント
- 賃料を払う必要がない(無償)
- 期間は基本「妻が生きている間(終身)」
- 長男の「賃料を払え」という要求とも調整できる制度
👉 したがって、賃料が払えないから家を出なければならない、とは限りません。
② 遺産分割で「妻が自宅を取得」する選択肢
配偶者は法定相続分が1/2。
自宅をあなたが単独取得し、その代わり預金を子どもが多く取得するなど、財産の振り分けで解決できることがあります。
例
- あなた:家(評価3,000万円)を取得
- 子ども二人:預金を中心に取得
- 差額は代償金(可能なら少額)で調整することもある
家を出ずに済むケースは非常に多いです。
■もし夫が「家を長男に相続させる」と遺言していた場合
この場合も、あなたがすぐに追い出されるわけではありません。
以下の制度が妻を保護します。
③「短期居住権」(民法1030条)
●内容
法律上、自動的に発生する権利。
妻は 夫が亡くなった時点で住んでいた家に、一定期間は無償で住み続けられる。
期間:
- 遺留分侵害額請求の期間内(原則1年)
- または遺産分割・遺言執行完了までの間
👉 遺言があっても、すぐに出て行く必要はない。
④ 遺留分(民法1042条)
遺言で長男に家を相続させるとしても、
妻には最低でも 遺留分(法定相続分の1/4) が保障されています。
遺留分侵害額請求をすることで、
長男は家を取っても、あなたに対して相当額を金銭で支払わなければなりません。
⑤ 遺産分割や話し合いで「居住の継続」が調整される
遺言があっても、
- 長男が家を所有
- 妻が「配偶者居住権」を取得
という形で共存させることも可能です。
つまり、遺言があっても
あなたの居住が法的に強く保護される仕組みは残っています。
■まとめ(重要ポイント)
| 状況 | 妻は家から出る必要がある? | 理由 |
|---|---|---|
| 遺言なし | ✕(必ずしも出る必要なし) | 配偶者居住権を設定すれば無償で住める |
| 遺言で長男に相続させる | ✕(即時退去は不要) | 短期居住権+遺留分+居住権設定の余地あり |
■あなたが取るべき行動(簡単ステップ)
必要なら専門家(行政書士・弁護士)に同席してもらう
長男の要求(賃料 or 退去)に即答しない
家の評価額・預金額を把握する
「配偶者居住権」を使う案を具体的に提案
遺産分割案の作成