(Q1)入院または入所後に居住地を失った者の実施責任は、どのように定められていますか?(Q2)管轄区域外の指定医療機関に入院させた居住地のない被保護者について、実施責任はどこにありますか?
(A1)結論から言うと、入院や施設入所によって元の住居を失った場合でも、原則として入院・入所する直前の居住地を管轄していた福祉事務所が引き続き実施責任を負います。
わかりやすい例
例1
- 神戸市須磨区に住んでいた
- 病院に長期入院した
- アパートを解約して住居を失った
この場合、
➡ 須磨区を管轄する福祉事務所が引き続き担当
となります。
病院の所在地が別の市町村であっても、通常は病院所在地の福祉事務所に実施責任は移りません。
例2
- 神戸市西区に住んでいた
- 老健施設に入所した
- 自宅を処分した
この場合も、
➡ 入所前に住んでいた神戸市西区の福祉事務所が担当
となるのが原則です。
なぜこのようなルールがあるのか
もし入院や施設入所のたびに実施責任が病院所在地や施設所在地へ移ると、
- 病院の多い自治体
- 老健や特養の多い自治体
に生活保護の負担が集中してしまいます。
そのため、
「入院・入所前の居住地が最後の居住地である」
と考えて、その自治体が責任を持つ仕組みになっています。
根拠
生活保護法第19条(実施責任)および厚生労働省の実施要領により、
入院又は入所により居住地を失った者については、入院又は入所前の居住地を所管する実施機関が実施責任を負う
とされています。
生活保護実務でよくあるケース
- 長期入院後に退院先がない
- 老健退所後に住む場所がない
- 障害者施設退所後にアパートを探す
- 無料低額宿泊所へ移る
このような場合も、まずは入院・入所前の福祉事務所が住宅確保や転居支援を含めて対応するのが原則です。
生活保護申請の同行業務をされる場合は、
「入院(入所)前の居住地を失っているので、生活保護法第19条に基づき貴所に実施責任があります」
と福祉事務所へ説明するとよいでしょう。
(A2)居住地のない被保護者(ホームレス状態など)を、ある福祉事務所が生活保護開始決定し、その後に管轄区域外の病院へ入院させた場合でも、原則として最初に保護を開始した福祉事務所が実施責任を負います。
わかりやすい例
例1
- A市で路上生活をしていた人が生活保護を申請
- A市福祉事務所が保護開始
- 治療のためB市の病院へ入院
この場合、
✅ A市福祉事務所が引き続き担当
となります。
B市の福祉事務所へ実施責任が移るわけではありません。
なぜか?
生活保護法では、居住地のない人については、
「現在地」を管轄する福祉事務所が保護を実施する
ことになっています。
そして、一度保護が開始されると、単に入院先が他市町村になっただけでは実施責任は移りません。
病院への入院は治療のための一時的な措置であり、
- 住所を定めたわけではない
- 保護の実施主体を変更する趣旨ではない
ためです。
根拠
根拠は、厚生労働省の生活保護手帳や実施要領における
- 「現在地保護」
- 「実施責任の継続」
の考え方です。
特に、
被保護者を管轄区域外の指定医療機関に入院させた場合は、入院先所在地の実施機関に実施責任は移らず、従前の実施機関が実施責任を有する
とされています。
行政書士実務でのポイント
ケースワーカーから
「病院が他市にあるのでそちらで保護を受けてください」
と言われることがありますが、
単なる入院だけでは実施責任は移りません。
そのため、
- ホームレス状態で保護開始
- 他市の病院へ入院
- 退院後の住居確保を進める
というケースでは、
保護開始をした福祉事務所が退院支援や住宅確保支援まで担当するのが原則
となります。
実務上は、厚生労働省の「生活保護手帳別冊問答集」の該当問答が根拠としてよく引用されます。
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