(Q)父が亡くなり、相続人は私(B)と弟(C)、妹(D)の3人です。遺言もなく、まだ遺産分割の話し合いがまとまっていません。ですが、父の葬儀代や生前の医療費を支払うために、父名義の銀行預金を引き出すことはできないのでしょうか?
(A)結論から言うと、
遺産分割がまとまっていない段階でも、一定の範囲で父名義の預金を引き出すことは可能です。
理由と具体的な方法は以下のとおりです。
■1. 法律上、相続人は「一定額まで」単独で払い戻し請求ができる
民法では、2019年の改正により、
🔹相続人が単独で銀行に対して預金の一部払い戻しを請求できる制度
が導入されています(民法909条の2)。
【引き出せる上限額の目安】
以下の計算式で求められます:
■引き出し可能額
[父の預金額 × 1/3 × 法務省令の割合(1/3)]
つまり、
👉 口座残高の 1/9 が限度額
👉 ただし、同一金融機関につき上限150万円
※相続人が複数いても、各相続人がそれぞれ請求可能。
■2. 必要書類の例(金融機関によって異なる)
- 亡くなったお父様の 死亡届受理証明や戸籍(除籍)謄本
- 自分が相続人であることを確認できる 戸籍
- 相続人全員の関係がわかる 戸籍一式
- 遺言がないことの申立書
- 金融機関所定の書類(相続届等)
※行政書士が戸籍収集や相続関係説明図を作成することも可能です。
■3. 葬儀代・医療費の支払いは「緊急性が高く、必要性が認められやすい」
この制度は、
- 葬儀費用
- 入院費・医療費
- 税金の支払い
など 急ぎの支出が必要な場合を想定して作られています。
金融機関も事情を理解しているため、手続き自体は比較的スムーズに行えます。
■4. それ以外の額を引き出すには?(遺産分割協議が必要)
上記の「法定の限度額」以上を引き出したい場合は、
- 相続人全員で遺産分割協議をして「誰が預金を取得するか」を決める
- その内容を金融機関に提出する
必要があります。
遺産分割がまとまらない場合は、
- 家庭裁判所で 遺産分割調停
を申し立てることも検討できます。
■5. 実務上のポイント
- 葬儀代の領収書や医療費の請求書は必ず保管
- 引き出したお金は「相続財産の清算として支払った」ことがわかるよう管理
- 他の相続人に後で説明できるように記録を残すことが重要
実際の現場では、あとで揉めるため、
何に使ったかを透明化することが非常に大切です。
■まとめ(短く)
それ以上引き出すには、相続人全員の合意(遺産分割協議)が必要
遺産分割が未確定でも、法律に基づき 預金の一部(最大150万円)を相続人が単独で引き出せる
計算式は「口座残高 × 1/9」
葬儀代や医療費など、緊急の支出目的で利用可能