(Q1)実施責任について、実施機関の間で見解の対立が生じた場合、どのように取り扱うべきですか?(Q2)実施責任の所在に関して、複数の実施機関間で意見が異なる場合、調整や解決のためにどのような手順を踏むべきですか?

(A1)生活保護の実施責任について、二つの福祉事務所などの間で意見が対立しても、どちらも「うちの担当ではない」として保護を放置してはいけません。

最も大切なのは、実施機関同士の争いによって、申請者・要保護者への保護に空白を生じさせないことです。

対応の流れ

  1. 関係する実施機関同士で協議する
    どちらが実施責任を負うのかを話し合うとともに、その間も必要な保護を適切に実施します。
  2. 協議で解決しない場合
    事案の詳しい内容を、都道府県または指定都市の本庁に報告し、判断・調整を求めます。
  3. それでも解決しない場合
    最終的には、厚生労働省本省に判定を求めるのが適切とされています。

具体例

A市は「この人の居住地はB市なので、B市が担当する」と主張し、B市は「現在A市に滞在しているので、A市が担当する」と主張している場合でも、本人に対して、

「担当が決まるまで申請を受け付けません」
「両市の話し合いが終わるまで保護できません」

という取扱いをすることは適切ではありません。

まず、本人が現在困窮している状況に対応し、保護が途切れないようにしたうえで、行政内部で実施責任を調整する必要があります。

わかりやすくまとめると

実施機関同士の担当争いは行政内部で解決すべき問題であり、その不利益を生活保護の申請者に負わせてはいけないということです。

(A2)生活保護の実施責任をどの福祉事務所が負うかについて、複数の実施機関の意見が異なる場合は、次のように調整します。

基本的な手順

1.関係する福祉事務所同士で事実確認をする

まず、双方の福祉事務所が連絡を取り、次の事項を確認します。

  • 申請者の実際の生活場所
  • 住民票の所在地
  • 入院・施設入所前の居住地
  • 家財や家族が残っている場所
  • 退院・退所後に戻る予定の場所
  • 転居の経緯
  • これまで生活保護を担当していた福祉事務所

実施責任は、住民票だけでなく、実際に生活の本拠がどこにあるかを中心に判断します。原則として、居住地がある場合は居住地を管轄する実施機関、居住地がないか明らかでない場合は現在地を管轄する実施機関が担当します。

2.法令・実施要領に基づいて協議する

双方の福祉事務所は、生活保護法第19条や厚生労働省の「生活保護法による保護の実施要領」に照らして協議します。

特に、入院患者、介護施設や障害者支援施設の入所者については、施設所在地ではなく、入院・入所前の実施機関が引き続き責任を負う場合があるため、施設の種類や入所経緯を確認する必要があります。

3.協議内容を記録し、必要な資料を共有する

口頭だけでなく、次の事項を文書や記録に残すことが重要です。

  • 争いとなっている事実
  • 各実施機関の見解
  • 適用を検討した法令・通知
  • 申請者の生活状況
  • 協議の日時と担当者
  • 暫定的な対応方法

これにより、単なる「押し付け合い」になることを防ぎます。

4.協議が整わない場合は、都道府県に調整を求める

市や福祉事務所同士で結論が出ない場合は、通常、都道府県の生活保護担当課・保護指導担当課に報告し、助言や調整を求めます。

同じ都道府県内の福祉事務所間であれば、その都道府県が広域的な立場から調整します。都道府県をまたぐ場合には、双方の都道府県を通じて協議し、必要に応じて厚生労働省へ疑義照会を行います。

協議中でも申請者を放置してはいけません

最も重要なのは、実施機関同士の協議を理由に、

  • 申請書を受け取らない
  • 他の自治体へ行くよう繰り返す
  • 保護の決定を先送りする
  • 医療や食費の支援を止める

という対応をしてはならないという点です。

申請は、申請者の居住地または現在地の実施機関に対して行うことができます。

特に、食事ができない、住む場所がない、治療が必要などの急迫した状況にある場合は、最終的な実施責任が確定していなくても、現在地を管轄する実施機関が必要な保護を行わなければなりません。生活保護法第19条第2項にも、急迫した状況では現在地の実施機関が保護を行うことが定められています。

わかりやすい例

A市に住んでいた人がB市の病院へ入院し、生活保護を申請したとします。

  • A市は「現在B市の病院にいるので、B市の責任」
  • B市は「入院前はA市で生活していたので、A市の責任」

と主張した場合、両市は、A市の住居が残っているか、家族や荷物があるか、退院後に戻る予定があるかなどを確認します。

A市に生活の本拠や確実な帰来先が残っている場合は、A市が実施責任を負う可能性が高くなります。一方、A市の住居を既に失い、帰る場所もない場合は、現在地であるB市が担当する可能性があります。

ただし、協議中に本人が治療費を払えず困っている場合は、責任が決まるまで本人を待たせるのではなく、まず必要な保護を行い、その後に自治体間で調整します。

まとめ

実施責任について意見が異なる場合は、

関係福祉事務所で事実確認
→法令・実施要領に基づく協議
→都道府県による調整
→必要に応じて厚生労働省へ照会

という流れで解決します。

そして、実施機関同士の問題によって、申請者の保護に空白を生じさせてはならないというのが最も重要な原則です。

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