(Q5)保護実施後に居住地が変更された場合、費用の精算はどのように行われますか?(Q6)居住地が判明した後、費用の負担者や精算方法に変更が生じる場合はありますか?
(A5)保護実施後に居住地が変更された場合の費用精算
生活保護を受けている人が別の市区町村へ転居し、生活の本拠が変わった場合は、原則として、転居前と転居後で保護の実施責任と費用負担を区切ります。
基本的な取扱い
| 期間 | 保護費を負担する自治体 |
|---|---|
| 転居・移管前まで | 転居前の福祉事務所 |
| 転居・移管後から | 転居先の福祉事務所 |
つまり、転居したからといって、転居前に適正に支給した保護費を、すべて転居先の自治体へ請求し直すわけではありません。
生活保護の実施責任は、原則として、本人の実際の居住地または現在地によって決まります。
実際の流れ
1.転居前の福祉事務所が転居を確認する
転居前の福祉事務所は、次の事項を確認します。
- 転居先の住所
- 実際の入居日
- 家賃や世帯構成
- 転居後も生活保護が必要か
- 転居先の福祉事務所への引継ぎ日
2.転居先の福祉事務所へ引き継ぐ
転居前後の福祉事務所が連絡を取り、保護の記録や収入、資産、医療、介護などの情報を引き継ぎます。
この手続きは一般に移管と呼ばれます。
3.基準日を決めて費用を区分する
自治体間で、どの日までを旧福祉事務所が担当し、どの日からを新福祉事務所が担当するかを決めます。
例えば、7月10日に神戸市から大阪市へ転居し、7月10日付で移管した場合には、一般的には次のように整理します。
- 7月9日まで:神戸市が担当
- 7月10日以降:大阪市が担当
ただし、月単位で支給される生活扶助費などについては、二重支給や支給漏れが起きないよう、両福祉事務所で具体的な精算方法を調整します。
すでに1か月分を支給していた場合
例えば、転居前の福祉事務所が7月分の生活扶助費を全額支給した後、7月10日に転居した場合でも、転居先の福祉事務所が同じ7月分をもう一度全額支給するわけではありません。
転居前後の福祉事務所で、
- 旧福祉事務所がどこまで支給済みか
- 新福祉事務所がいつから支給を始めるか
- 家賃や医療費などをどちらが負担するか
を確認し、重複支給や空白期間が生じないように調整します。
これは原則として自治体間の事務処理であり、適正に受給している本人が自治体間の費用を立て替えるものではありません。
転居費用はどちらが負担するのか
福祉事務所が必要な転居と認めた場合、一般に転居に必要な費用は、転居時点で保護を実施している転居前の福祉事務所が認定・支給します。
対象になり得るものには、次のような費用があります。
- 引越業者の費用
- 敷金などの住宅契約費用
- 火災保険料
- 保証料
- 必要な交通費
ただし、支給の可否や上限額は、転居理由、事前承認、転居先の住宅扶助基準などによって判断されます。
単なる転居と「繰替支弁」は別です
通常の転居による移管は、基本的に、
転居前の費用は旧自治体、転居後の費用は新自治体
と区分します。
一方、本人が別の地域で急病になり、現在地の自治体が緊急に保護費を立て替えた場合などは、生活保護法第72条の繰替支弁の問題になります。
したがって、通常の転居のたびに、転居前の自治体が支払った保護費を転居先の自治体がさかのぼって全額返すわけではありません。
注意が必要な施設入所
転居先が特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、障害者支援施設などの場合は、施設所在地に実施責任が移らず、入所前の福祉事務所が引き続き担当する場合があります。
そのため、施設への入所は、一般のアパートへの転居と同じ扱いになるとは限りません。施設の種類や入所前の状況を確認する必要があります。
まとめ
保護実施後に居住地が変わった場合は、原則として、
転居・移管前の保護費
→ 転居前の福祉事務所が負担
転居・移管後の保護費
→ 転居先の福祉事務所が負担
となります。
すでに支給済みの保護費については、両自治体が支給期間や内容を確認し、二重支給や支給漏れがないように調整します。通常、被保護者本人が自治体間の精算費用を負担することはありません。
(A6)居住地が判明したことにより、今後の費用負担者や、すでに支払った費用の精算方法が変わる場合があります。
基本的な考え方
当初、本人の居住地が分からなかったため、現在地を管轄する福祉事務所が保護を行っていたとします。
その後、調査によって、保護開始時点から別の市区町村に生活保護法上の「居住地」があったことが判明した場合は、原則として、その居住地を管轄する自治体が本来の費用負担者になります。生活保護法では、居住地がある人については居住地の保護実施機関が責任を負い、居住地がないか明らかでない人については現在地の保護実施機関が責任を負う仕組みです。
すでに支払った費用はどうなるのか
現在地の自治体がすでに生活扶助費や医療扶助費などを支払っていた場合は、次のように処理されることがあります。
- 現在地の自治体が、緊急に必要な保護費をいったん支払う
- 後から本人の居住地と、本来責任を負う自治体を確認する
- 現在地の自治体が、本来の負担自治体に費用を請求する
- 自治体間で費用を精算する
これが繰替支弁です。生活保護法第72条と同法施行令第9条に基づき、本来費用を負担すべき自治体に代わって支払った自治体が、後から費用の弁償を受けます。
具体例
大阪市に生活の本拠がある人が神戸市で急病になり、所持金もなく緊急入院したとします。
当初、居住地が分からなかったため神戸市が医療扶助を実施し、医療費を支払いました。その後、保護を開始した時点でも大阪市に実際の居住地があったことが確認された場合は、
- 神戸市が一時的に医療費を立て替える
- 神戸市が大阪市に支出内容を示して請求する
- 大阪市が神戸市に費用を支払う
という自治体間の精算が行われます。
判明後の費用だけが変わる場合
居住地が「保護開始時から存在していた」のではなく、保護開始後に新たに住居を確保して居住地ができた場合は、取扱いが異なります。
例えば、居住地のない人が神戸市で保護を開始し、その後大阪市のアパートへ正式に転居した場合は、
- 転居・移管前の費用は神戸市
- 転居・移管後の費用は大阪市
というように、原則として移管日を境に負担を分けます。
この場合、神戸市が適正に実施した過去の保護費を、大阪市がすべて遡って負担するわけではありません。
住民票だけでは判断されません
注意すべきなのは、後から住民票の住所が見つかっただけでは、直ちに費用負担者が変わるとは限らないことです。
生活保護法上の居住地は、単なる住民票所在地ではなく、本人が実際に生活の本拠としていた場所を指します。そのため、住民票は大阪市にあっても、すでに大阪市の住居を失い、神戸市で生活していた場合には、大阪市が本来の費用負担者とは認められないことがあります。
被保護者本人が返すのか
この費用精算は、基本的に自治体同士の問題です。
適正に保護を受けていた本人が、居住地が判明したという理由だけで保護費を返還するものではありません。また、本人に同じ保護費が二重に支払われるものでもありません。
ただし、本人が意図的に住所、収入、資産などを隠していた場合は、生活保護法第63条の返還や第78条の徴収が別に問題となることがあります。
まとめ
居住地が判明した後は、次のように判断されます。
- 保護開始時から別の自治体に居住地があった
→ 本来の自治体が費用を負担し、立て替えた自治体との間で繰替支弁による精算が行われることがあります。 - 保護開始後に転居して新しい居住地ができた
→ 原則として移管日以降の費用を転居先の自治体が負担します。
したがって、重要なのは、居住地がいつから存在していたのか、保護実施時点でどこが生活の本拠だったのかという点です。
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