(Q3)被保護者の居住地が判明した場合、費用負担はどのように取り扱われますか?(Q4)すでに実施した保護に要した費用は、どのように繰り替えて支弁されるのでしょうか?
(A3)被保護者の居住地が後から判明した場合
被保護者を「居住地がない、または不明な人」として現在地の福祉事務所が保護していたところ、後になって別の市町村に生活の本拠となる居住地があることが分かった場合は、判明した居住地を管轄する福祉事務所が、原則として保護の実施責任を引き継ぎます。
生活保護の実施責任は、原則として実際の居住地を基準に決められるためです。
費用負担の基本的な考え方
費用は、おおむね次のように整理されます。
| 時期・状況 | 費用の取扱い |
|---|---|
| 居住地が分からない間 | 現在地の福祉事務所が保護を実施し、その自治体が保護費を支弁する |
| 居住地が判明した後 | 居住地の福祉事務所へ連絡し、実施責任の移管を行う |
| 移管後の保護費 | 新たに担当する居住地の自治体が負担する |
| すでに現在地で支給した保護費 | 原則として、自治体間で実施責任や支弁関係を確認・調整する |
本人が生活保護費を二重に受け取ったり、通常の保護費を本人が返還したりするという話ではありません。どの自治体が最終的に費用を負担するかという、行政機関同士の問題です。
緊急保護の場合は「繰替支弁」になります
本人の居住地が別の市町村にあるものの、現在地で倒れた、食事がなく生命に危険があるなど、急迫した状況にあった場合は、現在地の福祉事務所が直ちに保護します。
この場合は、
- 現在地の市町村が、一時的に保護費を立て替える
- 最終的には、被保護者の居住地の市町村が費用を支弁する
という取扱いになります。これを繰替支弁といいます。生活保護法第72条第2項は、急迫時などの現在地保護に関し、居住地の市町村が費用を支弁し、現在地の市町村が一時的に立て替える仕組みを定めています。
具体例
神戸市内で倒れた人について、当初は居住地が分からなかったため、神戸市が医療扶助を実施したとします。
その後、その人の実際の居住地が大阪市にあることが分かった場合は、神戸市と大阪市が連絡を取り、
- 今後の保護をどちらが担当するか
- 神戸市が一時的に支払った医療費をどちらが負担するか
を調整します。
急迫した状況に対する保護であれば、原則として、神戸市が一時的に立て替え、居住地である大阪市が最終的に費用を負担することになります。
注意点
単に住民票が別の市町村にあっただけでは、その市町村が必ず費用を負担するとは限りません。
生活保護法上の「居住地」は、住民票の所在地ではなく、本人が実際に生活の本拠としていた場所を意味します。したがって、住民票は大阪市にあっても、実際には大阪市の住居を失い、神戸市で生活していた場合には、大阪市が居住地とは認定されないことがあります。
まとめ
被保護者の居住地が後から判明した場合は、原則として、その居住地の福祉事務所へ保護の実施責任を移します。
それまでに現在地の自治体が支払った保護費については、保護を行った理由や時期を確認し、自治体間で費用負担を調整します。特に急迫した事情による現在地保護の場合は、現在地の自治体が一時的に立て替え、居住地の自治体が最終的に負担するという取扱いになります。
(A4)「繰替支弁」とは
繰替支弁とは、本来その保護費を負担すべき自治体に代わって、別の自治体がいったん費用を立て替えて支払うことです。
その後、立て替えた自治体が、本来責任を負う自治体に対して費用を請求し、自治体間で精算します。
どのような場合に行われるのか
例えば、本人の居住地を管轄する福祉事務所が本来の保護実施機関であるものの、本人が別の地域で急病になり、現在地の福祉事務所が緊急に保護した場合です。
この場合、現在地の福祉事務所は、本人の生命や健康を守るため、居住地の確認や自治体間の協議が終わるのを待たずに、医療扶助などを実施します。
費用精算の流れ
基本的な流れは次のとおりです。
① 現在地の自治体が保護を実施する
急病、けが、食料不足など、すぐに保護が必要な場合は、現在地の福祉事務所が必要な保護を行います。
② 現在地の自治体が費用を立て替える
医療費、生活扶助費、移送費など、実際に必要となった保護費を現在地の自治体がいったん支払います。
③ 本来の保護実施機関を確認する
調査の結果、本人に別の自治体の居住地があり、その自治体が本来の保護実施責任を負うことが確認されます。
④ 立て替えた自治体が費用を請求する
現在地の自治体は、保護の内容、期間、支払額などを示して、本来責任を負う自治体へ費用を請求します。
⑤ 自治体間で精算する
本来責任を負う自治体が、立て替えられた保護費を現在地の自治体へ支払います。
この仕組みは、生活保護法第72条の「繰替支弁」に基づくものです。
具体例
大阪市に実際の居住地がある人が、神戸市内で倒れ、所持金もなく緊急入院したとします。
この場合は、
- 神戸市が直ちに医療扶助を実施する
- 神戸市が医療費をいったん支払う
- 後から大阪市が本来の保護実施機関であると確認される
- 神戸市が大阪市に立替費用を請求する
- 大阪市が神戸市へ費用を支払う
という流れになります。
被保護者本人への影響
繰替支弁は、基本的に自治体同士の費用精算の問題です。
そのため、適正に実施された保護であれば、通常は被保護者本人が立替費用を返還したり、二重に保護費を受け取ったりするものではありません。
ただし、本人が収入や資産を隠していたなど、生活保護法第63条や第78条に該当する事情がある場合は、別途、本人に返還・徴収が求められることがあります。これは繰替支弁とは別の問題です。
まとめ
すでに実施した保護費は、まず緊急に保護を行った自治体がいったん立て替えます。
その後、本来の居住地や保護実施責任を確認し、本来責任を負う自治体が、立て替えた自治体にその費用を支払って精算するという取扱いになります。
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