(Q1)甲が入院している間、丙を丁が引き取った場合、甲の保護の実施責任はどこに移るのでしょうか?(Q2)甲が退院するまでの間の暫定的な引き取りか、丙の老衰に基づき将来の生活の面倒を見るための引き取りかによって、実施責任の所在は変わりますか?
(A1)甲の保護の実施責任が、丙の引取先である丁の所在地へ自動的に移るわけではありません。
丙が、甲の退院まで一時的に丁に預けられたのではなく、老衰などの事情から、今後は丁が継続して生活の面倒を見るために引き取った場合、甲と丙の世帯は分かれたものと判断されます。つまり、甲は単身世帯として扱われます。
そのうえで、甲の実施責任は次のようになります。
- 甲が入院前に住んでいたA市の家屋が現在も残り、退院後に戻る予定がある場合
→ A市が居住地として引き続き保護を実施します。 - A市の家屋を引き払い、戻る住居がなくなっている場合
→ 甲の現在地である病院所在地を管轄する福祉事務所が、現在地保護を行います。設問のように病院もA市内であれば、結局A市が実施責任を負います。
したがって、簡単にいうと、
丙が丁に引き取られても、甲の保護の実施責任は丁のいる地域には移りません。甲自身の居住地、または病院の所在地によって決まります。
なお、丙の引取りが甲の退院までの一時的なもので、甲が近いうちに退院して再び一緒に生活する予定であれば、甲と丙の居住地は従来どおりA市にあるものとして扱われます。
(A2)引き取りの目的や実態によって、生活保護の実施責任の所在が変わる可能性があります。
1.甲が退院するまでの一時的な引き取りの場合
丙を預かる目的が、
- 甲の入院中だけ面倒を見る
- 甲が退院すれば元の生活場所に戻る予定である
- 荷物や住民票なども元の場所に残っている
という暫定的・一時的なものであれば、通常は、引き取り先に丙の新しい「居住地」が成立したとは直ちに判断されません。
この場合は、原則として、従来から丙を担当していた福祉事務所が引き続き実施責任を負うと考えられます。
2.丙の老衰により、今後も継続して生活の面倒を見る場合
一方で、
- 丙は元の住居に戻る予定がない
- 引き取り先で今後も継続して生活する
- 食事、介護、生活費などを引き取り先の家族が日常的に支える
- 荷物を移し、生活の本拠を引き取り先に移している
という事情があれば、引き取り先が丙の新しい「居住地」と認定される可能性があります。
その場合は、原則として、新しい居住地を管轄する福祉事務所に実施責任が移ることになります。生活保護の実施責任は、基本的に本人の居住地を管轄する実施機関が負うためです。
分かりやすくまとめると
| 引き取りの内容 | 実施責任の考え方 |
|---|---|
| 甲の退院までの一時的な預かり | 原則、従来の福祉事務所が担当 |
| 丙が今後も引き取り先で暮らす | 新しい居住地の福祉事務所が担当する可能性が高い |
ただし、「引き取る」と言っただけで自動的に実施責任が変わるわけではありません。
福祉事務所は、期間、本人の意思、元の住居へ戻る可能性、家財の移動、生活費の負担、介護の状況などから、丙の生活の本拠がどこにあるかを総合的に判断します。
したがって、この質問への答えは、
一時的な引き取りであれば実施責任は通常変わりませんが、丙が将来にわたり引き取り先で生活することになれば、丙の居住地が移ったものとして、実施責任も引き取り先の福祉事務所へ移る可能性があります。
となります。
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