(Q1)生活保護申請時に、最終学歴や両親の出身地などプライバシーに関する事項について、申請者は必ず回答しなければならないのでしょうか?(Q2)申請者が最終学歴や両親の出身地などの質問への回答を拒否した場合、どのような不利益を受ける可能性がありますか?
(A1)必ずしも、最終学歴や両親の出身地など、聞かれたプライバシー事項すべてに一律に回答しなければならないわけではありません。 福祉事務所が確認できるのは、基本的に生活保護の要否・種類・程度・方法を決めるために必要な事項です。生活保護法24条も、申請時に必要な情報として、資産・収入、就労・求職状況、扶養状況、他制度の利用状況などを挙げています。
たとえば最終学歴は、就労能力、職歴、資格、今後の就労支援などを検討するうえで必要になる場合があります。そのため、質問すること自体が直ちに不適切とはいえません。一方で、現在の保護の要否判断や支援方針とほとんど関係がないのに、必要性の説明もなく詳細な学歴を求めるのであれば、「何の判断のために必要なのですか」と確認して構いません。
さらに、両親の出身地については、通常、それ自体が資産・収入や扶養能力を判断するための直接的な情報とは考えにくいものです。親の氏名、住所、続柄、交流状況、援助の有無などは扶養関係の確認として必要になることがありますが、「父親はどこの県の出身か」「母親の出生地はどこか」といった情報まで常に必要とは限りません。
厚生労働省も、生活保護の面接相談について、相談者の困窮状況を具体的に把握することを求める一方、個々のプライバシーに配慮し、相談内容に応じた懇切丁寧な対応を行うことを監査上の確認事項としています。
したがって、質問された場合には、すぐに拒否するというより、
「この質問は、生活保護のどの判断に必要なのでしょうか」
と確認するのが現実的です。福祉事務所側も、保護の要否判断や援助方針の策定に必要な理由を説明したうえで、必要な範囲に限って聴取することが望まれます。
なお、「この質問に答えないなら生活保護申請を受け付けません」というように、保護の要否判断に直接必要とはいえない事項への回答を申請受付の条件にすることは問題があります。 厚労省も、資料提出について「資料が提出されてからでないと申請を受け付けない」とする対応は適切でないと明示しています。
要するに、生活保護だからといってプライバシーを無制限に質問できるわけではありません。収入・資産・仕事・健康・住居・世帯・扶養関係など、保護の判断に必要な事項には協力する必要がありますが、最終学歴や両親の出身地などは「その情報が何のために必要なのか」を個別に確認してよい、という考え方です。
(A2)回答を拒否しただけで、直ちに生活保護を受けられなくなるわけではありません。
ポイントは、その質問内容が生活保護の要否判断に本当に必要な情報かどうかです。
たとえば、収入・預貯金・不動産・就労状況・世帯構成など、保護の要否を判断するために重要な事項について回答や資料提出を拒み、そのため福祉事務所が必要な事実確認をできない場合には、調査が進まず、結果として保護決定が遅れたり、場合によっては申請が却下される可能性があります。
一方で、最終学歴や両親の出身地のような事項については、それが現在の生活保護の要否判断に直接必要とは限りません。そのため、回答を拒否したことだけを理由として、
「申請を受け付けない」
「生活保護を却下する」
という扱いが当然に認められるわけではありません。
最終学歴については、就労支援や稼働能力の判断の参考になる場合がありますので、質問する合理的な理由があるケースはあります。しかし、回答しなかったからといって、預貯金や収入など他の資料から保護の要否を判断できるのであれば、それだけで不利益処分をするのは慎重であるべきです。
両親の出身地については、親の現在の住所・連絡先・扶養関係とは異なり、通常は保護の要否判断との関係がさらに弱い情報です。そのため、拒否した場合には、
「この情報は何のために必要なのですか」
と質問の目的を確認して構いません。
また、生活保護法28条では、保護の決定や実施のため必要がある場合に、福祉事務所が要保護者の生活状況を調査したり、必要な報告を求めたりできる仕組みがあります。ただし、これは必要な範囲での調査を認める規定であり、生活保護を申請した人があらゆる私生活上の質問に無条件で答えなければならない、という意味ではありません。
したがって、実務上は次のように考えると分かりやすいです。
保護判断に必要な重要事項を合理的な理由なく拒否する
→ 調査不能・決定遅延・場合によっては却下等の不利益につながる可能性がある。
保護判断との関連性が薄いプライバシー事項を拒否する
→ その拒否だけで直ちに申請却下とはならない。
もし福祉事務所から「答えないと保護できません」と言われた場合には、**「この質問への回答が、生活保護法上どの判断に必要なのか」**を確認することが大切です。
要するに、回答拒否そのものが問題なのではなく、その情報が保護の要否を判断するためにどの程度必要なのかによって、不利益の有無が変わると理解すると分かりやすいです。
⇓