(Q3)申請者が大学院卒業など高い学歴を持っていることが判明した場合、「家庭教師や塾の講師として就労できるだろう」と判断され、生活保護申請が却下されることはありますか?

(A3)いいえ、「大学院卒だから家庭教師や塾講師として働けるはず」という理由だけで、生活保護申請を却下することは適切ではありません。

生活保護では、働く能力がある人について「稼働能力を活用しているか」を確認しますが、その判断は学歴だけで行いません。厚生労働省の実施要領では、①実際に働く能力があるか、②その能力を活用する意思があるか、③現実に就労の場を得られるか、の3点で判断するとされています。さらに、年齢、健康状態、資格、生活歴、職歴などを客観的・総合的に見なければならないとされています。

したがって、大学院卒という学歴があっても、

  • 家庭教師や塾講師の経験があるか
  • 教える能力や適性があるか
  • 地域に実際の求人があるか
  • 勤務時間や条件が本人に合うか
  • 病気や障害、育児・介護など就労を妨げる事情がないか
  • 本人が現実的な範囲で求職活動をしているか

などを確認する必要があります。厚労省も、就労の場を得られるかについては、地域の求人内容や有効求人倍率、育児・介護などの事情を踏まえて判断するよう示しています。

例えばAさんが大学院卒でも、塾講師の経験がなく、現在その地域で応募できる求人もなく、一般事務や軽作業を含めて真摯に求職活動をしているのであれば、「高学歴だから塾講師になれるはず」という推測だけで保護を拒否することはできません。

厚生労働省も明確に、求職活動をしていても現実に働く職場がない場合には生活保護を受けることができ、単に働ける年齢なのに就労していないというだけで申請を却下することは適当でないとしています。

一方で、実際に塾講師などの求人があり、本人の能力・経験からみても就労可能で、福祉事務所やハローワークから具体的な就労支援を受けているにもかかわらず、正当な理由なく応募を拒み続けるなど、本人に能力を活用する意思がないと認められる場合には、生活保護法4条1項の「能力の活用」の要件が問題になる可能性はあります。

つまり、

「大学院卒=家庭教師・塾講師ができる=生活保護却下」ではありません。

正しくは、**「本人の学歴・職歴・健康状態・求職活動・地域の求人状況などを総合的に見て、現実に就労できるのか、本人がその能力を活用しようとしているのかを判断する」**ということです。

なお、たとえ就労可能であっても、現時点で無収入で最低生活費を下回っている場合には、まず生活保護を開始し、その後に就労支援を行うという対応もあり得ます。 「将来働けそう」というだけで、現在の困窮状態を無視して申請を却下するものではありません。

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